内灘闘争を元にした絵画作品。池田龍雄の《網元》

こんにちは。

 

1950年代には社会問題・事件を作品とするルポルタージュ絵画が描かれました。

 

代表する作品の一つ池田龍雄さんの《網元》(1953年)があります。

 

内灘闘争を主題にした作品だと知った作者ですが…

 

そもそも内灘闘争ってなんだ…?

 

という状態だったため、内灘闘争がそもそも何かという所から勉強し、作品を考察しました。

 

考察し、間違いなく言えることは、内灘闘争の様子を描いたことに留まらないメッセージ性があることです。

 

詳しく見ていきましょう!

 

 

 

池田龍雄《網元》(1953年)

1950年代、社会の出来事や事件を描いたルポルタージュ絵画が多く作られました。

 

池田龍雄(1928~2020)さんも内灘闘争を描いたルポルタージュ絵画シリーズを展開します。

 

その中で特に評価されているのが《網元》です。

museumcollection.tokyo

 

現在は東京都現代美術館に所蔵されています。

 

ただ作品を見ての通り、内灘闘争の作品だとぱっと見て分かるものではありません。

 

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どのような意図で描かれているのでしょうか。

 

内灘闘争とは

内灘闘争は石川県の内灘町にて起こった闘争です。

 

1949年~57年、朝鮮戦争を受けて内灘砂丘の海岸線が砲弾試射場に使用することになりました。

 

内灘の村々で反対運動が起こり、全国へも広がります。

 

政府は一度期限付きで試射場を許可しますが、反対運動が大きくなり、撤収としました。

 

現在も、内灘には着弾観測棟の跡地があります。

bunka.nii.ac.jp

 

ルポルタージュ絵画

ルポルタージュ絵画は1950年代に起こった、日本美術の作品の傾向の一つです。

 

社会問題や事件の記録性を重視した絵画です。

 

しかし、単に事件の様子を描いただけではありません。

 

無意識な心の動きを描くシュルレアリスムの技法を混ぜ、事件を風刺的に描くこと、主観的に描くことを重視しています。

 

筆者の考察

池田龍雄の描き方

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池田龍雄さんの描き方も、ルポルタージュ絵画の風刺性や主観性が入った作品です。

 

ルポルタージュ絵画には現地を訪れず、メディアの情報のみを頼りに描いた作品もありますが、池田龍雄さんは内灘を訪れたそうです。

 

東京現代美術館の紹介によれば

「一般労働大衆の意識と、それとは甚だしくズレのある芸術家の意識とをいかに結びつけ、弁証法的発展にまでもってゆくかということ」に日々頭を悩ませていた池田は、積極的に社会との接触を図るため、仕事場を飛び出し、反対運動を繰り広げる内灘村の漁民の中に自ら入っていったのである。

網元(内灘連作の内) | Tokyo Museum Collection

とあります。

 

作品の中で「一般労働大衆の意識」と「芸術家の意識」の混ざりを目指したということですね。

 

《網元》に描かれているもの

皺のある男性が大きく描かれていますが、作品が「網元」であることから、男性は網元さん、長年漁師を生業としてきた大将と考えることができます。

 

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男性は縄で首を絞められつつ、左手には船を持っています。支えているのか、動かしているかはわかりません。右手には網を持っています。

 

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背景には、魚と一台の船が描かれています。右に見える魚には肉がありません。船は男性の手のひらにあるものとはやや違った船となっています。

 

注目点は、内灘闘争の作品でありつつ、砲台のことや、反対する村民の様子ではなく、ただ網元の様子が描いてあることです。

何を伝えようとしたのか

作品での、「一般労働大衆の意識」「芸術家の意識」はそれぞれ一体何か考察します。

 

「一般労働大衆の意識」としては、

  • そもそも内灘闘争という民衆の動きを作品にしたこと
  • 村民が漁業者としての砲弾試射場へ反対しているということ
  • 現地を訪れて描いたこと

があると考えます。

 

一方で、「芸術家の意識」として、また他地域の人として、問題を広く捉えているという特徴があるのではないかと思います。

 

作品の中の

  • 網と船の両者を一人で持つ負担
  • 縄で首を絞められている(しがらみか?命の危険か?)
  • 肉のない魚

これらは、そもそも漁村社会の問題を表現していると見ることができます。

 

もしかすると池田龍雄さんは、
内灘闘争での議題は「アメリカ軍を追い出す」ではなく、漁村そのものにある
と考えていたのではないだろうか。

 

そもそも砲弾試射場の場所に選ばれることのない「豊かな漁村を作ること」と考えていたのでは…

 

もしこの視点が正しければ、現代社会に通じるものもあるかもしれません。

 

まとめ

本記事では、『内灘闘争を元にした絵画作品。池田龍雄の《網元》』と題してお話してきました。

 

  • 池田龍雄《網元》は内灘闘争をテーマとしたルポルタージュ絵画
  • 内灘闘争は石川県の内灘町で起きた砲弾試射場設置への反対運動
  • ルポタージュ絵画は社会問題や事件を風刺性や問題性を混ぜ、主観的に書いた作品
  • 《網元》はそもそも漁村社会の問題性から、内灘闘争を見た作品ではないか?

 

とまとめます。

 

単に、事件を伝えるだけであれば、文章でできるかもしれませんが、絵画だからこそ伝えれる感情や問題意識がありますね。

 

抽象的なため広い見方を与えます。

 

読んで頂きありがとうございました。